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[受賞者インタビュー]第4回・第5回ハニー・オブ・ザ・イヤー最優秀賞・日本ミツバチ部門【安芸の国 里山のしずく】

美味しいはちみつコンテスト、2018年開催の「第4回ハニー・オブ・ザ・イヤー」、2019年開催の「第5回ハニー・オブ・ザ・イヤー」2年連続で日本ミツバチ部門で最優秀賞を受賞したのは平沖養蜂様【安芸の国 里山のしずく】でした。平沖養蜂の代表である平沖浩志さんに河村がインタビューを行いました。

※受賞者インタビューは順次掲載予定です
※「ハニー・オブ・ザ・イヤー」とは ⇒ こちら

※2024年のエントリー概要(4/26にエントリー締切しました) ⇒ こちら


河村:受賞を知ったときのことをお聞かせください。

平沖さん:1回目の最優秀賞の受賞は2018年8月3日のことでした。思いがけない受賞は本当にサプライズでした。
自分の採った蜂蜜は美味しいと自分勝手に思い込んでいて、近所で食べてくれる人もとても美味しいといってはくれますが、一般世間の評価はどうなんだろうか? 日本中の蜂蜜を食べたことのある厳しいプロの方々は合格点をだしてくれるのだろうか? ただそれが知りたいという軽い気持ちで応募しました。
それが思いがけず最優秀賞受賞という私にとって100点満点以上のものをいただきました。高名な審査員の先生方から、とても温かい論評をいただきました。その論評はいまでも「里山のしずく」を販売するときの決まり文句になっています。(上品な味。日本ミツバチらしい味などです。)
受賞は自分にとっての大きな自信になるとともに、ただ蜜蜂を飼育して楽しむだけの趣味の世界から、日本ミツバチの養蜂家として責任ある立場になった、という自覚が生まれました。美味しい蜂蜜を採らなくてはいけない、受賞に恥じない蜂蜜にしなくては、という思いで一杯になりました。
余談ですが、受賞が決まった8月3日の前月7月6日に坂町は西日本豪雨に遭いました。私の住んでいる小屋浦地区では死者が17名も出ました。私の家も胸の高さまで水がきました。巣箱を置いている裏の崖が崩れ、一箱だけだめになりましたが、幸いにも残りは被害もなく翌年のコンテスト、フェスタに出品することができました。災害からの復旧には2ヶ月以上かかりましたが、その間も採蜜作業を行なうなど蜂の世話(採蜜作業)をし続けました。当時町内会長をしていた私の折れそうな心を受賞の喜びが支えてくれました

養蜂場のある広島県から瀬戸内海を望む

河村:「安芸の国 里山のしずく」はどのようなはちみつですか?

平沖さん:温暖な瀬戸内気候の中で春から夏にかけて花を付ける野山の花木「山桜、桐、フジ、ニセアカシア、椿、ツツジ、サツキ、レンギョウ」などの花から集めた里山のしずくは「さらりとした優しい味」「日本ミツバチらしい味」が特長の蜂蜜です。
「さらりとした優しい味」とは蜂蜜をスプーンで口に入れたときに一般的なセイヨウミツバチの蜂蜜のようなガツンとくる甘さではなく、喉を通るときに感じる優しい甘さ、もう一口、口に入れたいと思わせる蜂蜜です。蜜を集める力の強い西洋ミツバチと比べると日本ミツバチは一回り小さく1/10の採蜜能力しかありません。

日本ミツバチの巣箱

河村:それはたいへん希少なはちみつになりますね。2年連続の受賞は、まだ他の蜂蜜にない快挙です。平沖さんは2年連続選ばれた理由をどのように思いますか?

平沖さん:2回も選んでくださった事は望外の幸せです。1度目の受賞後に翌年のことを考えて採れた蜂蜜に特別な手立てを施したわけではありません。私の蜂蜜に対するスタンスは“自然の姿をありのままに”です。審査員の皆様から再度の高評価を頂いたのは私の努力ではなく、温暖な瀬戸内海に面した坂町の里山の力です。一言で言えば「花木のバランス」だと思います。日本ミツバチが集めるのは百花蜜ですから入蜂・採蜜の時季(4月初旬から6月下旬)に咲くいろんな花々から蜜を集めます。何千匹のミツバチが何千個のハニカムに蜜を貯めます。蜜の糖度を上げるため昼夜を問わず小さな羽で風を送ります。その限りない努力は人間に蜜を与えるためではなく蜜蜂が命をつなぐものです。貴重な生命の源である蜂蜜を人間が頂いています。
私はいつもミツバチに来ていただいている、と思っています。その意味で2年連続受賞できたのはハチさんのおかげです。これからもハチさんのために良い住処(巣箱)を用意し続けます。(ちなみに設置した巣箱は入蜂してもしなくてもシーズンオフには全ての箱を一度分解して清掃乾燥します。翌年度のシーズンにはきれいな巣箱に来て貰うためです。)

河村:販路は広がりましたか?

平沖さん:受賞するまでの販路は町内の方や、役場関連のイベントでした。受賞後は販路が大きく変わりました。新たに3つの販路ができました。
一つ目は、インターネットでのオンライン販売を始めました。いまでは北は北海道から南は鹿児島まで注文があります。また、ウェブサイトでのご購入は首都圏の方が多いです。これは「はちみつフェスタ」に訪れた際に“里山のしずく”を食した方からのご注文ではないかと考えています。はちみつフェスタでの対面販売のおかげです。
二つ目は、銀座1丁目に“TAU(タウ)”という、広島県産業部が出店しているアンテナショップに出荷出来るようになりました。6年前に1回目の最優秀賞受賞という勲章を手に受賞後の10月販売を申し込んだところ快く引き受けてくださいました。店内には広島県内市町の蜂蜜がたくさん並んでいます。その中に入れていただきました。昨年の「はちみつフェスタ2023」開催の折、フロア担当にご挨拶しに伺ったところ“里山のしずく”は名指しで購入希望がある唯一の蜂蜜だそうです。
1回目の受賞の後日談ですが、TAUに出荷するようになってすぐ“里山のしずく”にとって大きな転機がありました。TAU管理者の県産業部ブランド推進課(当時)から瓶ラベルのブラッシュアップを勧められ、フードコーディネイター、食品デザイナーを紹介されました。デザイナーからは銀座で売るのにふさわしいラベルのデザイン、化粧箱、持ち帰り袋、リーフレットなど統一されたパッケージにした高級化を提案されました。さらに同席したフードコーディネイターから蜂蜜の単価も受賞作品にふさわしい単価を設定するようアドバイスがありました。蜂蜜にこんな高価な値段設定をして購入者がいるのだろうか? 大きな不安はありましたが、単価の改定後も価値を分かってくださる多くの方々に支えられて安定的に販売出来ています。(TAUでは1年を通して平均して週に1個程度の購入があるようです。ただ生産量が限られていますのでウェブサイト販売は今年度は2月末、昨年度は12月末で販売終了しました。)
三つ目は、地元自治体の坂町役場が“里山のしずく”を町の特産物として認めてくれたことです。ふるさと納税の返礼品にもなりました。これも受賞に伴い広がった販路で、大事な出来事でした。
その他ですが、“ぐるなびの秘書のお土産”に出さないか”とか、東京の企業向けのお土産品を扱っている会社などから年間300本ほど欲しいというような話もありましたが、生産量が限られているためお断りしました。

平沖さん

河村:昨年は、はちみつフェスタご出店ありがとうございました。4年ぶりの開催でしたがいかがでしたか。

平沖さん:まず4年ぶりの開催、とても楽しかったです。理事の方、お世話をしてくださるボランティアスタッフ、前回と同じようにとても楽しそうにしていらっしゃいました。皆さん蜂蜜をとても愛していらっしゃるんだな、と感じました。来場したお客様と会話の中でも来場者の皆様が「はちみつフェスタ」の開催を待ち焦がれていたのが感じられました。
私は“里山のしずく”を前回よりブラッシュアップした形で出品することができたことを大変嬉しく思いました。フェスタにおいでになる蜂蜜愛好家の皆様は、とてもオシャレな方ばかりです。皆さんの目にとまるように売台には里山のしずくの前垂れをかけ、ショーケースも準備しました。前垂れはとてもインパクトがあり、会場の入口という好位置と相まって来場者の目を引いたようでした。わざわざ写真を撮っていく方が幾人もいらっしゃいました。
それから、あるお客様は前回のはちみつフェスタで里山のしずくのファンになり銀座1丁目のTAUでいつも買ってくださっているようで、会場で生産者の私に会えて嬉しいと、とても喜んでくださいました。“里山のしずく”愛好家の生の声が聞けて私もとても嬉しかったです。これも「はちみつフェスタ」という相手の顔を見ながら販売出来る会場ならではの出来事でした。私の採った蜂蜜を喜んで食べてくださる方のためにも日本ミツバチの蜂蜜を作り続けたいと思いを新たにしました。
はちみつフェスタ会場で蜂蜜の試食をしていただいたところ、日本ミツバチの蜂蜜という珍しさもあって500名以上の方が試食してくださいました。皆さん普段あまり口にすることのない日本ミツバチの蜂蜜を食し、その優しい味に驚いていらっしゃいました。これからも毎年フェスタが開かれ、多くの蜂蜜愛好家に会え、お話しできることを願っています。

河村:これからの取り組みや抱負をお聞かせください。

平沖さん 新しい取り組みとして今年2月に“里山のしずく”のスプーンを作りました。スプーン本体は燕三条、木製のチャームは国産檜材と国産にこだわりました。
今後、スプーンは蜂蜜本体とセットでも販売しようと考えています。このスプーンを使って蜂蜜を食べるたびに日本ミツバチをより身近に感じていただきたいと思います。

里山のしずくのオリジナルスプーン


平沖さん:これからの抱負ですが、毎年採れる蜂蜜が最優秀賞受賞という名に恥じないような蜂蜜であり続けるように頑張りたいと思います。「自然の姿をありのままにお届けすると」いう信念を持って生産し続けたいと思っています。私はもう72歳になりました。日本ミツバチを飼い始めて11年が経ちました。その間に最優秀賞を2回もいただくなどモチベーションの上がる出来事があり、とても励みになりました。フェスタに参加して東京銀座という日本一の場所で蜂蜜を販売出来るということも出来ました。蜂蜜の生産者にとってこれ以上のものはありません。最高の栄誉をいただいています。これからも日本ミツバチの蜂蜜を日本中の方々に食べていただくために頑張りたいと思います。そしてなによりも美味しい日本ミツバチの蜂蜜をつくり続けることにより日本蜜蜂という種を守っていくという使命感をもって取り組み続けたいと考えています。


【平沖養蜂】安芸の国 里山のしずく
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